インドネシアの人口が多い5つの理由!2億7,600万人で世界4位!課題も解説

この記事は約21分で読めます。
記事内に広告が含まれています。

「世界人口白書2023」によると、インドネシアの人口は2億7,750万人で世界第4位。インド、中国、アメリカに続いて人口が多い国です。日本の人口は1億2,330万人なので、その2倍を超える人々がいるという計算になります。

世界の人口は80億4,500万人。インドネシアの人口は2億7,750万人なので、世界全体の3.5%、実に30人に1人がインドネシア人という計算に。なぜインドネシアには、これほどまでの人口がいるのでしょうか? それが本記事の目的です。

実際、インドネシアへ行けば、空港やレストラン、ショッピングモールや観光施設など、どこに行っても大量の人々であふれていることを実感するはずです。

今回の記事では「インドネシアの人口が多い理由」として5つのポイントを列挙して紹介します。

インドネシアの人口が多い5つの理由
  1. もともと人口が多かった(1950年時点で世界第6位)
  2. 「子供が多いほど幸福も多く訪れる」という思想があった!
  3. 初代大統領スカルノ時代は家族計画の促進が禁じられていた!
  4. 食料の供給量が大きいため、人口増加を支えることができた!
  5. 民主化による地方分権の促進で、中央集権的な家族計画政策の実効性が弱まった!

世界が不況期であってもインドネシアが高い経済成長を続けることができた背景には「内需が旺盛だった」という事情があります。つまり、人口の多さが実需を支えてきたということです。

「インドネシアの人口が多い理由」がわかれば、きっとインドネシアに対する親近感もわいてくるはずです。

インドネシアは人口が多い!現状と将来予測は?

インドネシアの女性たち

「インドネシアの人口が多い理由」を探る前に、まずはインドネシアの人口について、現状と将来予測をおさえておきましょう。

現在の人口は?

インドネシア中央統計庁(BPS)によると2022年のインドネシアの人口は2億7584万人と推計されています。
出典:STATISTIK INDONESIA 2023 – Statistical Yearbook of Indonesia 2023

インドネシア中央統計庁(BPS: Badan Pusat Statistik)の調査結果「インドネシア統計2023」(STATISTIK INDONESIA 2023 - Statistical Yearbook of Indonesia 2023)

また、国連人口基金(UNFPA)が2023年4月に発表した「世界人口白書2023」によると、インドネシアの人口は、2億7750万人。国別に見た「世界の人口ランキング」トップ10は、以下のとおりです。

世界の人口ランキング
  1. インド:14億2860万人
  2. 中国:14億2570万人
  3. アメリカ:3億4000万人
  4. インドネシア:2億7750万人
  5. パキスタン:2億4,050万人
  6. ナイジェリア:2億2,380万人
  7. ブラジル:2億1,640万人
  8. バングラデシュ:1億7,300万人
  9. ロシア:1億4,440万人
  10. メキシコ:1億2,850万人
国連人口基金(UNFPA)が2023年4月に発表した「世界人口白書2023 - 80億人の命、無限の可能性:権利と選択の実現に向けて」(state of world population 2023|8 Billion Lives, INFINITE POSSIBILITIES - the case for rights and choices)

出典: 「世界人口白書2023 – 80億人の命、無限の可能性:権利と選択の実現に向けて」(state of world population 2023|8 Billion Lives, INFINITE POSSIBILITIES – the case for rights and choices)

将来予測は?

2022年のインドネシアの人口は2億7584万人〜2億7750万人と見られているわけですが、今後どうなっていくのか、将来予測を見てみることにしましょう。

国連の「世界人口推計2022」(World Population Prospects 2022)によると、インドネシアの人口は2035年には3億人を超えるとされています。具体的には以下のとおりです。

2035年3億人
2060年3億1942万人をピークに減少へ
2100年2億9712万人
出典:「世界人口推計2022」(World Population Prospects 2022)

「世界人口推計2022」によると、日本の2100年の人口は7384万人です。つまり2100年のインドネシアは、日本の4倍もの人口を抱える大国になっているということになります。

大国インドネシアの人口が減少する未来

前述の推計にあるように、インドネシアの人口は2060年まで増え続けます。ということは、それから以後は、人口減少が予想されているということです。

実際のところ、「人口増加数」ではなく「人口増加率」に着目すると、すでに減少を始めています。

1971年1億1921万人
1980年1億4749万人1971年からの年平均2.31%増
1990年1億7938万人1980年からの年平均1.98%増
2000年2億626万人1990年からの年平均1.44%増
2010年2億3764万人2000年からの年平均1.49%増
2020年2億7020万人2010年からの年平均1.25%増
出典:Hasil Sensus Penduduk (SP2020)
インドネシアの人口と人口増加率の推移(1961年〜2020年)  出典:Hasil Sensus Penduduk (SP2020)

インドネシア人口と人口増加率の推移(1961年〜2020年)

インドネシアというと経済発展が著しく、「まだまだ成長し続ける国」というイメージがあるかもしれません。しかし、すでに高齢化や少子化が始まっている側面もあります。

インドネシアの将来を考えるにあたっては、これらの点もしっかり理解しておく必要があります。

なお、インドネシアの人口について、地域別・世代別の分布や将来予測など、詳しいことは以下の記事にまとめています。興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。

インドネシアの人口が多い5つの理由

インドネシアの人口は2億7000万〜2億7500万人で、世界第4位の規模にあること。あと10年ちょっとで3億人の大台に乗ると見られていることを紹介してきました。

しかし、なぜインドネシアには、これほどまでに多くの人口を抱えるようになったのでしょうか。その背景には、さまざまな要因がありますが、ここでは次の5つの理由をとりあげて解説します。

インドネシアの人口が多い5つの理由
  1. もともと人口が多かった(1950年時点で世界第6位)
  2. 「子供が多いほど幸福も多く訪れる」という思想があった!
  3. 初代大統領スカルノ時代は家族計画の促進が禁じられていた!
  4. 食料の供給量が大きいため、人口増加を支えることができた!
  5. 民主化による地方分権の促進で、中央集権的な家族計画政策の実効性が弱まった!

もともと人口が多かった(1950年時点で世界第6位)

まず1つ目の理由は「もともと多かった」という歴史的な背景があります。インドネシアだけが格別に急増したというわけではありません。

前述した国連の「世界人口推計」を見ると、1950年の時点において、すでにインドネシアは世界の人口ランキングで第6位となっています。

1950年:世界人口 24億7,767万人
  1. 中国:5億3919万人
  2. インド:3億5310万人
  3. アメリカ:1億47 096
  4. ロシア: 1億180万人
  5. 日本: 8365万人
  6. インドネシア: 6886万人(世界で第6位)

その後、2021年では、第4位になりました。

2021年:世界人口 78億7,693万人
  1. 中国:14億2586万人
  2. インド:14億280万人
  3. アメリカ: 3億3649万人
  4. インドネシア:2億7289万人(世界で第4位)
    (第12位:日本: 1億2494万人)

この70年で、インドネシアの人口は約4倍になりました。とはいえ、世界の人口も3.2倍になっており、インドの人口も4倍になっています。たしかに中国の2.6倍に比べれば大きな変化かもしれません。

しかし、世界的に見て「インドネシアだけが格別に急増した」というわけではありません。

「人口が多い理由は?」に対して「もともと多かった」というと、身も蓋もないように感じる人もいるでしょうが、こうしてみると「もともと多かった」というのは、あながち無視できない点であることがわかります。

「子供が多いほど幸福も多く訪れる」という思想があった!

インドネシアの子供

2つ目の理由は「子供が多ければ多いほど幸福も多く訪れる」という思想があったという点です。

インドネシア語では「Banyak anak banyak rezeki」(“rezeki” を “rejeki”と書く人もいます)と表現します。近年では「昔の考え方」「昔の言葉」と見なされていますが、高齢層や地方の人々の中には、まだこうした考え方をもつ人もいるようです。

この考え方が広がった背景には様々な要因がありますが、その大きな理由として「イスラム教の教義が影響している」という指摘があります。

イスラム教の経典「クルアーン」の第11章(フード章)6節には、以下の記述があります。

「地上の生きもののうち、アッラーからの糧に頼らないものは何もない。かの御方はそれらの居どころも、預けどころも知っている。すべては、明白な書の中に記されている」

وَمَا مِن دَٰبَّةٍۢ فِى ٱلْأَرْضِ إِلَّا عَلَى اللَّهِ رِزْقُهَا وَيَعْلَمُ مُسْتَقَرَّهَا وَمُسْتَوْدَعَهَا ۚ كُلٌّ فِى كِتَابٍۢ مُّبِينٍۢ

出典:「クルアーン 日本語読解」PDF版(第1版)」– 東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センター

簡単に言えば「あらゆる生きものの糧はアッラーが満たしてくださる」という考え方です。子どもの養育費等の心配をする必要はなく、かえって子供が多い分、より多くの糧が入ってくるのだと。

またオランダ占領期には、こうした考え方が政策として逆利用されました。

それが1830年、オランダ領東インド総督のヨハネス・ファン・デン・ボス (Johanes van den Bosch) が導入した「政府栽培制度」(かつて「強制栽培制度」とも呼ばれましたが、近年の歴史研究により表現変更されています)です。

未開拓地が多かったこと、また財政難に陥ったオランダ政府からの地租の重圧に応えるためにも、多くの労働力が必要とされました。「子供が多いほど一人あたりの重圧がやわらぐ」という側面もあったようです。この期間、ジャワ島では人口の急増が見られています。

細かい話になりますが、当時、たとえば土地所有の形態が「個人所有」から「共同所有」に変更された背景には、家族内での遺産分割を考慮する必要を無くすことで「子供の数を制限しよう」と考える必要を無くす、という効果も狙っていたようです。
出典:MUNCULNYA FILOSOFI “BANYAK ANAK BANYAK RIZKI” PADA MASYARAKAT JAWA MASA CULTUURSTELSEL

初代大統領スカルノ時代は家族計画の促進が禁じられていた!

3つ目は、インドネシア独立後も、子供が多いことが歓迎されていたことです。

前項の内容も影響していますが、初代スカルノ大統領は「家族計画」や「人口制限」に否定的なスタンスをもっていました。「偉大な国には大きな人口が必要だ」「人口が多いことは国家の強みである」と考えていたからです。

スカルノ政権末期に駐インドネシア・アメリカ大使をつとめたハワード・ジョーンズ(Howard Palfrey Jones)は、1971年に回想録『インドネシア:可能な夢』(Indonesia: The Possible Dream)を出版しています。

同書によれば、スカルノは人口を2億5000万人まで増やすことを望んでいたようです。

インドネシア中央統計庁(BPS)が10年に1度実施している公式の人口調査(Sensus Penduduk) によると、第1回目の1961年調査でのインドネシアの人口は9,702万人です。スカルノは、インドネシアの国土の広さを考えれば、2億5,000万人の人々を支えることができると見ていたようです。
出典:Sukarno Suka Banyak Anak, Tak Suka KB – Sejarah Jakarta

さらにいうと、当時の刑法では家族計画や人口制限の考えを広めることが禁じられていました。たとえば、刑法(KUHP)283条や534条が該当します。

■刑法283条
良識に反する文書や画像、物品を提供したり見せたりした者は最高9ヶ月の禁錮または最高3000ルピアの罰金
(妊娠を防止・終了させるための物を未成年の者、あるいは明らかに17歳未満だとわかるものに対して提供したりすることも含む)

■刑法534条
妊娠を予防する手段を公然と、あるいは求められていないにも関わらず提示した者、そのための手助けが可能である旨を書面や放送で示した者は、最長2ヶ月の禁錮、あるいは最高3000ルピアの罰金

出典:POLITIK HUKUM PROGRAM KELUARGA BERENCANA DI INDONESIA: Jurnal Hukum & Pembangunan: Vol. 51: No.3, Article 3.

これが厳格に適用されていたかどうかは不明ですが、当時の政府のスタンスとしては、人口制限に反対の立場だったようです。

たとえば、1952年、ジョグジャカルタ保健省の母子福祉局長であったジュリー・スリアンティ・サロソ医師は、日刊紙「Kedaulatan Rakjat」(1952年8月16日付)で、「母親は出産を制限する勇気と意志を持つべきだ」と投書。

これに対して、スカルノ大統領やヨハネス・レイメナ保健大臣は彼女を叱責。また、ジョグジャカルタ女性組織協会(GOWY)は「出産制限は人権の侵害だ。赤ん坊の種を殺す結果となり、ひいては売春を拡大し、社会の道徳を破壊するものですらある」と主張したようです。
出典:Sejarah KB dan Ide Dua Anak Cukup dari Era Sukarno sampai Soeharto

ただ、人口増加に歯止めをかけないことには経済発展の支障になると考えていた人たちはいました。1957年12月23日に「インドネシア家族計画協会」(Perkumpulan Keluarga Berencana Indonesia: PKBI)というNGO団体が誕生しています。

因果なことに、スカルノに近い人たちが立ち上げた団体で、しかも初代会長はスカルノの主治医でした。これが禁止されなかったのは、人口制限を目的とするものではなく、あくまでも妊婦の健康維持を志向するものだったからのようです。

当時は合計出生率が5.6人という時代。子沢山が宿命ですらありました。そのため家族計画に対する理解は得られにくかったようで、学者もふくめ「家族計画は妊娠や人権を制限するもの。せっかく手に入れた独立を奪うようなもの」とすら受け止められたといいます。

また、妊娠と出産は女性の偉業であり、数百万の新世代を生み出すことは豊穣な人的資源をマネジメントすること。ひいては世界の中の偉大な国家というイメージを示すものだと考えられたのです。

とはいえ、たくさんの子供を生むというのは女性にとっては大きな負担です。出典は不明ですが、複数の研究者によれば「2〜3人の子供で充分」と考えていた母親も少なくなかったようです。
出典:Sukarno Suka Banyak Anak, Tak Suka KB – Sejarah Jakarta

なお前述の「インドネシア家族計画協会」(PKBI)が法人として正式に法務省から承認されたのは、スハルトが大統領代行に就任し、実質的に「2代目大統領」としての権限を握った1967年になってからです。

そこからインドネシアは政策転換。家族計画の推進へと舵を切ります。スカルノとスハルトは、人口問題について対極を行く政策を推進することになるのです。

出典:財団法人 アジア人口・開発協会:第25回人口と開発に関するアジア国会議員代表者会議「セッション1:インドネシアの成果と課題」(国家家族計画調整庁(BKKBN)スギリ・シャリフ長官)

1968年10月には半官半民の国立家族計画研究所(LKBN)が設立され、1970年には国家家族計画調整庁(BKKBN: Badan Koordinasi Keluarga Berencana Nasional)が誕生。1972年には大統領直属の機関に移行されることになります。

食料の供給量が大きいため、人口増加を支えることができた!

4つ目の理由は「食料の供給量が多い」という点です。

ある特定のエリアでどれだけの人口を養えるか。その力を「人口収容力」あるいは「人口支持力」といいます。また、持続可能なレベルで人々を支えることができる最大人口のことを「可容人口」(かようじんこう)と呼びます。

世界を見渡せば、恵まれたエリアもあれば、そうでないエリアもあります。そうした中、この人口支持力や可容人口を支える大きな要因は「食料生産量」にあると言われています。

食料が安定供給できないと、飢餓や栄養失調が発生して人口成長が鈍化します。しかし充分な供給があれば、健康的な環境が生まれ、その分、人口増加の勢いは自然と加速します。

この可容人口は、「そのエリアの食料生産量」を「そのエリアの1人あたりの必要栄養量(食料需要量)」で割って求めます。そのため食料生産量が多いほど、そのエリアの可容人口は多くなるわけです。

(ドイツの地理学者アルブレヒト・ペンクが考案した「ペンクの基本公式」と呼びます。厳密にいうと、地球レベルでどれだけ養えるかという考えですが、ここではそれを地域レベルで考えています)

インドネシアは高温多湿で、1年を通して作物の生産を行うことができます。また食の多様性があり、食材も豊富にあることが知られています。

コメを例にとると、アメリカ農務省(USDA)のデータによると、2022〜2023年にかけての年間の生産量は、3,460万トンで世界第4位です(日本は745万トン)。

(なお、上のアメリカ農務省(USDA)のデータでは3460万トンですが、インドネシア統計局のデータでは3,090万トンです)

また、2023年の耕作面積は1,020万ヘクタールとなっており、日本の124万2,000ヘクタールに比べると8.2倍の広さです。
出典:令和5年産水稲の作付面積及び10月25日現在の予想収穫量:農林水産省大臣官房統計部

とはいえ、人口が増えれば食料の供給力にも限界があります。

2022〜2023年にかけての年間のコメの消費量は、3,530万トンで世界第4位です。

上記の数字を見ればわかるように、輸入をしなければまかなえない状況になっています。

この背景には「1人あたりのコメの消費量が大きい」という問題があります。2022年におけるコメの消費量は、1人あたり年間81キロでした。これは世界有数の水準とされています。

インドネシア農業省が発表した「食品消費統計 2022」(STATISTIK KONSUMSI PANGAN 2022)によると、最近の5年間の数字は以下のとおりです。

インドネシア農業省が発表した「食品消費統計 2022」(STATISTIK KONSUMSI PANGAN 2022)
2018年80.641 kg
2019年78.429 kg
2020年78.487 kg
2021年81.518 kg
2022年81.044 kg
出典:STATISTIK KONSUMSI PANGAN 2022: Tabel 1.1a. Rata-rata Konsumsi per Kapita Bahan Makanan yang Mengandung Beras, 2018 – 2022

日本の場合、2021年の数値で 51.4kgなので、インドネシアの1人あたりのコメの消費量が、いかに大きいかがわかります。実に1.57倍です。
出典:食料需給表(令和4年度):農林水産省大臣官房政策課 食料安全保障室

こうしたことから、インドネシアではコメの消費量を下げようという動きが見られます。

たとえば2023年9月、元大統領のメガワティは演説の中で、「コメの1人あたりの消費量は世界一になっており、糖尿病などの病気の原因になっている。健康を考えれば65kgにおさえなくてはいけない」として、コメ以外の多様な食物にも目を向けるべきだと主張しています。
出典:Megawati: Konsumsi Beras Masyarakat Indonesia Tertinggi di Dunia | Republika Online

こうした動きの他、経済成長が続けば、コメの消費量が下がる可能性もあります。

前述のとおり、日本の場合は2021年の数値で 51.4kgです。しかし過去の統計を見ると、昭和50:年には88kg、昭和40年には111.7kgを記録していました。

「輸入に頼らなければいけない状況にある」とはいえ、インドネシアの旺盛な食料生産力が、インドネシアの人口増を支えてきたということは間違いありません。

余談になりますが、前述の統計では、お茶目?なことに、「ナシゴレン」や「ナシチャンプル」、「ブブルアヤム」などの1人あたり年間消費量も載せています。参考までに、2022年は以下のとおりです。

ナシ・ゴレン1,159 kg
ナシ・チャンプル7,495 kg
ブブル・アヤム0,213kg
出典:STATISTIK KONSUMSI PANGAN 2022: Tabel 1.1a. Rata-rata Konsumsi per Kapita Bahan Makanan yang Mengandung Beras, 2018 – 2022

民主化による地方分権の促進で、中央集権的な家族計画政策の実効性が弱まった!

前述のとおり、初代スカルノ大統領の時代は、家族計画や人口抑制が否定的でした。

しかし2代目のスハルト大統領の時代になると、その政策が急転換。経済成長のためには子供の数をコントロールして人口増加を抑制することが欠かせないと考え、家族計画が国家開発計画の一部に組み込まれました。

大統領の指導のもと、「小さく幸せで豊かな家族の規範」(NKKBS: Norma Keluarga Kecil Bahagia dan Sejahtera)が追求され、省庁から地方自治体に至るまで、総力戦でのキャンペーンが展開されました。

看板や歌、影絵人形芝居のワヤンや映画、切手や硬貨など、あらゆる手段を通じたプロモーションが行われ、中でも以下のスローガンが有名です。

「子供は2人で十分、男の子も女の子も同じ」
“Dua anak cukup, laki-laki perempuan sama saja”

「健康のために家族計画を実践しよう」
“Demi Kesehatan Anda Jalankanlah Keluarga Berencana”

「家族計画のない人生は、未来のない人生だ」
”Hidup tanpa KB Berarti Hidup tanpa Masa Depan”

出典:Keluarga Berencana di Era Pak Harto – Kompas.id

世界銀行や国連などの援助も受けながら、潤沢な予算でプロジェクトを展開。その結果、合計特殊出生率(一生の中で生む子供の数)は、以下のような変遷をとげました。

1971年5.61人
1980年4.68人
1990年3.33人

首都ジャカルタでは、以下のとおりです。

1971年5.18人
1980年3.99人
1990年2.33人

出典:Angka Kelahiran Total / Total Fertility Rate (TFR) Menurut Provinsi, 1971-2020 – Tabel Statistik – Badan Pusat Statistik Indonesia

この人口抑制策は世界的にも注目を受け、1989年6月に、開発途上国に人口関連の支援を行う機関「国連人口基金(UNFPA: United Nations Population Fund)から国連人口賞(United Nations Population Award)を受賞するに至ります。
出典:Award Laureates

これは「人口問題対策に取り組み、人々の健康と福利の向上のために優れた業績をあげた人」に贈られるもので、スハルトが受賞した理由は 「自発的家族計画によって人口増加率の抑制及び乳幼児死亡率の低下を成功させた功績」というものでした。
出典: 家族計画プログラムと女性の人権 : インドネシア及び東ティモールの事例を中心に: 経済と社会:東京女子大学社会学会紀要(古沢, 希代子)

スハルト政権下の家族計画キャンペーンの特徴は、大統領からの中央集権的なトップダウンで行われたということ。ところが、1998年5月、スハルトが退陣。民主化が進む一貫で、地方分権が進み、トップダウンのやり方が使えなくなります。

その結果、「未成年で出産する女性」の数が増加するなど、過去への揺り戻しも見られるようです。

BKKBNの調査(Survei Demografi dan Kesehatan Indonesia: SDKI)によると15歳〜19歳で出産した女性の数は、2007年に1000人中35人だったものが、2012年には48人に増加。2017年調査では36人、2021年には20人へと減少したものの、2022年には26人へと増加。

出典:止まらない人口増加 停滞する家族計画 増える10代の母親 | じゃかるた新聞
出典:Angka Kelahiran Pada Perempuan Usia 15-19 Tahun Menurut Daerah Tempat Tinggal – Tabel Statistik – Badan Pusat Statistik Indonesia
出典:Angka Kelahiran Usia Remaja 15-19 Tahun Meningkat, Perlu Perhatian Serius

また、地方によっては家族計画の優先順位が下がったり、今まで担っていた中央の役人のノウハウが継承されずに政策が実行できない等の問題も起きていると聞きます。

とはいえ、この揺り戻しは軽微なもので、「人口増加の要因」とは言い切れません(統計数値を見ると、それだけが理由とは言えないものの、兆候は表れています)。ただし、人口増加をアンコントローラブルにしかねない要因として、今後、要注目の要素と言うことができるでしょう。

まとめ:インドネシアの人口が多い5つの理由!

インドネシアの人口が多い理由について解説してきました。

現在の人口は2億7750万人で世界第4位。2035年には3億人を突破しようとしています。その理由として、次の5点を取り上げました。

インドネシアの人口が多い5つの理由
  1. もともと人口が多かった(1950年時点で世界第6位)
  2. 「子供が多いほど幸福も多く訪れる」という思想があった!
  3. 初代大統領スカルノ時代は家族計画の促進が禁じられていた!
  4. 食料の供給量が大きいため、人口増加を支えることができた!
  5. 民主化による地方分権の促進で、中央集権的な家族計画政策の実効性が弱まった!

とはいえ、インドネシアの人口が多い理由は様々な要因が複合的にからんでいます。これら5つだけが原因というわけではありません。

たとえば、

インドネシアの人口が多い、その他の要因
  1. 一定の就業機会が存在し、失業率をおさえることができたこと
  2. 温暖な気候ゆえに、過ごしやすい環境が維持されていたこと
  3. 相互扶助の精神があり、収入が少なくても助け合える環境があったこと
  4. 教育不足や無理解などの背景により、未成年での出産が多かったこと

などなど、他にもさまざまな要因があります。

今回の記事では「インドネシアの人口が多い理由」として、メインとなる要因に絞って解説をしてきました。今後また、補足となる記事を追加していければと思っています。

この記事を書いた人

「インドネシアの気になるテーマが5分でわかる!」をキャッチフレーズに、インドネシアのあらゆる基礎情報をわかりやすく解説していきます。

「ヌサンタラ」はインドネシアの別名で「島々」を表す言葉。首都移転後の新首都名の名前も「ヌサンタラ」です。

ヌサンタラ!! 編集部をフォローする
生活と社会
ヌサンタラ!! 編集部をフォローする
ヌサンタラ!!
タイトルとURLをコピーしました